電話

「どこにいるの?」
電話の先で、母の声がする。
「真っ暗だよ」
私は答える。
「そんなはずはないでしょう」
「でも、真っ暗だよ」
「それは錯覚。明かりを付けなさい」
「違うよ。光の方が錯覚なんだよ」
母は笑った。
「そんなの、大した問題じゃないでしょう」